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環境省が発表した2010年時点の統計では、プラごみが海へ排出される量は世界で800万トンと推測されている。海は世界でひとつ。どこの国が、という問題ではない。サーファーがよく知るブランドの多くはそんな海のSOSに早くから心を傾け、自分ごととしてさまざまなアクションを起こしてきた。ブランド各社に聞いた、“いま私たちができること”。
設計から生産までの工程をカリフォルニア・オーシャンサイドの自社工場で行なっているソフトボードメーカーの『アイエヌティー ソフトボード』。配送で生じるエネルギーを節約できるよう、地元で調達したリサイクル・マテリアルを使い、ハンドメイドで一本一本丁寧に製造されている。モデルは、高いパフォーマンス性能が自慢な『5 10”フィッシュ』、ライディング時に抜群の加速力を生み出し、まるで空を “飛んでいるような感覚”を味わえる『ザ・バード』、バリエーションに富んだトレーニンングが可能な『ザ・クラシック』などがラインラップし、スタイルに合わせたチョイスが可能だ。地元企業でスクラップになった素材を回収し、サーフボードの製造工程に取り入れるよう日々研究開発に勤しんでいる。自然だけでなく、地元にもハッピーを届けられるようなシステムを将来的に構築していく予定だ。
常にサーファーに寄り添った機能性を追い求めてきたハーレー。早くからサスティナビリティに着目した彼らを代表する製品と言えば、2007年にリリースされたファントム・ボードショーツだ。このボードショーツには約12本分のペットボトルが再利用され、ライディング中のパフォーマンスを向上させるために軽量かつ伸縮性に優れたマテリアルへとアップデートが重ねられている。そして、2021年7月には新たなコレクション『ハーレー・ベーシックス 』を立ち上げ、ファーストデリバリーでは、メンズからはホワイトとブラックそれぞれのTシャツとロン Tee、ウィメンズからはマキシドレスがリリースされた。これらのアイテムに用いられている生分解性ポリエステル繊維は従来のポリエステルとは異なり、自然界の微生物によって約3年で完全に分解されるため、地球環境に害を及ぼすリスクを大幅に軽減することが可能だ。また、サイズ表記のプリントを省き、洗濯ネームやブランドネームをリサイクル素材に切り替えたことで環境負荷をさらに抑えている。これからもサーファーのパフォーマンスを向上させるための技術革新に力を入れながら、サスティナビリティを軸にしたモノづくりを行なっていく。
海洋生態系に有毒な成分を回避するため、化学肥料、除草剤、駆除剤不使用の土壌で栽培された植物をベースとし、シンプルかつナチュラルなサンスクリーンやボディースプレーを製造している、オールグッド。現在、世界中の珊瑚や海洋生態系は日焼け止めに含まれる化学物質により汚染され、過度のストレスを受けていると言われている。生態系の源となる水源やサーファーたちを魅了し続けるブレイクを保護するためにアースフレンドリーなオールグッドのプロダクトを生活に取り入れよう。
メイド・イン・ジャパンにこだわり、生地のカッティング、縫製、接着といった工程をオールハンドメイドで行なってきた、リンコン・ウエットスーツ。長年ウエットスーツに使用されてきた石油由来のものではなく、石灰石を原料につくられたネオプレーン・シートを一部モデルで採用し、現在それらはブランド全体の出荷枚数の約60%を占めている。海の環境がこれ以上悪化しないよう、ウエットスーツだけでなく、カスタム・ボードショーツやビーチで着用可能なTシャツなどのアパレルにも再生繊維の利用頻度を高めていく。
“色褪せないデザイン”をコンセプトに、どんなコーデにもマッチするプロダクトを数多くリリースしてきたシュルリアル。ジャケットやシャツにリサイクル・コットンやリサイクル・ポリエステルなどの再生繊維にくわえ、オーガニック・コットンなど自然素材を使用している。ブランドのルーツである、サーフィン、スケート、スノーボードを取り巻く環境への恩返しをするために、今後は自然に配慮したオーガニック・ラインの立ち上げを検討中だ。
1997年の創業以来、耐久性に優れたデイリーウエアの製造を行なってきたグッドオン。親子二世代に渡って着用できるほどのタフさの秘密は原料と製法にある。彼らはコットン・USAに認証されたブランドで、これは各アイテムにアメリカ製の綿が50%超使用されていることを表している。上質なアメリカンコットンをふんだんに使うことで耐久性に優れ、ソフトな肌触りを味わえるというわけだ。くわえて、洗濯縮みを考慮したうえでオリジナルのシルエットをキープできるよう、ボディ全体に強度ある縫製を施している点も見逃せない。トレンドの移り変わりが激しい現代において、己のスタイルをブラさず、気に入ったアイテムを長年着続けることこそエコであり、真のサーファーだ。
高機能かつ高品質なプロダクトを展開し、国内外のサーファーから支持されているアックス・クラシック。ハイブリットUジップなど革新的なシステムを打ち出しながら、環境に配慮したモノづくりを熱心に行なっている。そんな彼らが着目したのはペットボトル。きれいに洗ったペットボトルをきちんと分別してリサイクルする日本人のマナーによって、良質な使用済ペットボトルが多く回収されている。かつ、日本のリサイクル工場ならではのさらなる高い選別・洗浄技術によって不純物が少なく透明度の高いチップに生まれ変わるのだ。このチップからつくられた再生繊維『エコブルー』を用いて、ストレッチ・ジャージ素材の『リ:ブルー(写真右)』と起毛ジャージ素材の『プレミアム サーモ ブルー(写真左)』を開発した。リサイクル素材ではあるものの、バージン・ポリエステルと遜色のないクオリティを実現し、優れた伸縮性と心地よい肌触りを味わえる。今後は、すべてのアイテムに100%リサイクル素材を用いられるようさらなる開発を続けながら、「必要量以上つくりすぎない」、「必要なもの以外はつくらない」をモットーにしたオーダーメイドのウエットスーツ・メーカーを目指していく。
カリフォルニア州サンタクルーズで100%オーガニックのワックスを製造している、マツナス・オーガニック サーフワックス。無農薬で栽培されたサンタクルーズ産のイチゴやラズベリー、ジャスミン、はちみつなど自然由来の材料のみをワックスに用い、パッケージは再生紙とリサイクル・インクでデザインされている。現在、ベースコート、トロピカル、ウォーム、クール、コールドの5種類のサーフワックスをリリースしている。このワックスを輸入するリークタイトでは、SDGsの観点から海ガメを守る団体やこどもの貧困を撲滅する団体に売上の一部を寄付するとともに、直接カンボジアに赴き支援も行なっている。
クリエーターズ&イノベーターズのメンバーに、トーマス・キャンベルやデリック・ディズニー、ジェフ・マッカラムなどを擁し、数多くのクリエイティブな取り組みを行なってきた、ヴィスラ。彼らは「常に環境への影響を最小限に抑え、我々を育ててくれた海と波を保護する」という信念を体現するため、自然素材のマテリアルをボードショーツに使用することを決心した。その原料となるのはココナッツ。毎年、地球上で200億個以上ものココナッツが実を結んでいるが、中身だけ消費され外側の殻の部分はゴミとして廃棄されている。ヴィスラはこの現状を打破するべく、ココナッツの殻をリプリーブ社のリサイクル・ポリエステルとブレンドしたアップサイクルな糸『ココテックス』を生み出し、リリースするすべてのボードショーツに採用している。この素材は、吸水速乾性、防臭性、耐久性などサーファーが求める機能を凝縮したスペックを持ち合わせているのも特筆すべき点だろう。現在、全ラインナップの60~70%が環境に配慮したアイテムとなっており、100%を目指して日々研究と努力を繰り返し行なっている。
国内初のヘンプ・アパレルブランドとして1994年に誕生したゴーヘンプ。このストレートなブランド名には、「無農薬で育つ天然植物ヘンプの素晴らしさ」や「神事やお祭りに使われる日本人にとって身近な存在」であることを後世に伝えたいという想いが込められている。彼らはヘンプを天然のハイテク繊維と位置づけ、ペットボトルを原料としたリサイクル素材やオーガニック・コットンなどの天然繊維同士を組み合わせて環境への負担を減らしつつ、常に新しい風合いや色合いを提案してきた。ヘンプを使ったアパレルやアクセサリーは長年着続けられるタフさに加え、優れた吸湿・速乾性やUVカット性能を持ち合わせた、まさにサーファーズ・スペック!今後はファッションの域を超え、環境団体との取り組みを強化し海岸環境のゴミ問題に対する意識向上を促す意向だ。
アメリカ東海岸に生きるサーファーたちのライフスタイルを発信している、ピルグリム サーフ+サプライ。エコフレンドリーな素材をアイテムに採用するのはもちろん、さらなる環境負荷の低減を目指すため、FSC認証の素材と植物由来のインクを使用したショッピング・バッグの有料化をスタートさせた。 2020年7月から半年に1度のペースで、ショッパーと現在販売しているパッカブル・バックの売上の一部を環境保全団体への寄付や社会貢献活動に充てている。また、各ショップに三菱ケミカル・クリンスイ社製のウォーター・サーバーを設置、ナルゲンとコラボしたボトルもリリースし、海洋プラスティック問題の要因のひとつとされるペットボトルの削減に向けた取り組みも積極的に行なっている。今できることをコツコツ積み重ねていくことが、大きな問題の解決へと繋がるだろう。
2018年、紙製のキャンディスティックをつくる技術を生かし、長時間水に溶けにくい『紙ストロー』の製造販売を皮切りに脱プラ活動を開始した平和メディク。プラスチックの使用が当たり前であった綿棒容器と個包装フィルム(特許出願中)を紙包材に変更させた『ぜんぶ紙リサイクルできる綿棒シリーズ』を2019年にリリースした。さらに、国際環境NGO『サーフライダー・ファウンデーション』に『紙ストロー』の売上の一部を寄付し海洋環境の保護に役立ててる。“海に捨てさせない環境を整えることも責任のひとつ”と彼らは考え、地球で生まれ育った責任を果たすべく、活動の幅をより一層広げていく。
海と街それぞれのライフスタイルにマッチするモノづくりを行なう、ターンミーオン。想いが凝縮したアイテムを長年着続けられるように、彼らは生産を担っている国内の工場において特別な素材や加工にも即座に修理対応を行なってくれるようなサービスを構築している。また、大量生産ではなく、素材や加工などにこだわったアイテムを日本の職人が少しずつ生み出す、少量生産という要素も取り入れている。今後もこのスタンスを軸に、より多くの人に良質さを届けられるよう努力し続ける。
製造されるすべてのサーフボードがエコボードとしての認定を取得しているファイヤーワイヤー・サーフボード。この確認は、海洋環境の保護を目的に活動するNPO団体『サスティナブル・サーフ』が、炭素排出量の削減、再生可能・リサイクルまたはアップサイクルされた材料の使用、製造過程において有毒性物質の削減につながる材料と製法を採用していることを証している。ちなみに、タイの自社工場はサーフボード・ファクトリーで唯一となるISO認定を受けており、植物由来の低VOCレジンやリサイクル可能な木材を使用したモデルがラインラップしている。またサーフボード以外にも、ブルーム社とコラボした、海藻をアップサイクルしたデッキパッドやリサイクル・プラスティックを使ったリーシュコードなどをリリースしている。ほかにも、ボードづくりの過程で生まれるEPSの端材を再利用して庭の舗装材や植木鉢をつくり、ファイヤーワイヤーのヘッドオフィスをはじめ、ケリー・スレーターが手がけたウェーブプール『サーフランチ』にも取り入れている。ブランドが掲げる信念のひとつである “環境へのインパクトをできる限り最小にする”を達成するために、これまでのシステムから脱却し、リサイクルおよびアップサイクルされたモノのみを使ったサーフボードづくりを行なっていくことを究極の目標に設定している。
カリフォルニアのエンシニータスでブランドをスタートさせ、サーフィンをはじめとするアクション・スポーツのカルチャーをバックボーンに持つ、ニクソン。海の環境保全とその改善のため、サーフウォッチにスイスの#タイド・オーシャン・マテリアルによる100%リサイクルの海洋プラスティック素材を採用したモデルを取り揃えている。この時計を身に着けて海に繰り出せば、波がプアなときだって心はクリーンになるはずだ! そして、バッグにはペットボトルをアップサイクルしたリプリーブ®・アワーオーシャン™の繊維を取り入れることで、年間で数千本のペットボトルを再利用している。彼らのゴールである「海から廃棄物をなくし、多くの人が海を楽しめること」を実現するために、引き続き、#タイドやリプリーブ®と協力しつつ、2022年までに517.000個の海洋プラスティックを再利用した製品を展開し、海洋環境の改善に貢献していく。
世界の自然環境を守るべく、リリースするすべてのボードショーツにリサイクル・ペットボトルを原料とした生地を採用してきた、ビラボン。アパレルだけでなくウエットスーツにおいてもエコを心がけており、植物由来のナチュラルラバー『ユーレックス・ピュア・ストレッチ』や生分解性リサイクル繊維『シクロ・ファイバー』にくわえて、ノーベル賞を取得したテクノロジーを活用し開発された超先進素材『グラフェン』がリサイクル仕様となって使用されている。最新技術とエコが共存したプロダクトを身につけて海へと繰り出そう。
音楽やストリートといった、さまざまなカルチャーをクロスオーバーさせたプロダクトを発信しているブリクストン。ブランドを代表するアイテムと言えば、キャップとネルシャツだ。前者には廃棄された漁網を100%リサイクルしたブレオ社のネットプラス®を帽子のバイザーに使用したコレクションをリリースしており、また後者には素材としてリサイクル・ナイロンやヘンプを取り入れている。“スタイリッシュなエコ”をワードローブに取り入れたいなら、ブリクストンのアイテムがおすすめだ。
プロサーファー兼フィルムメーカーとして活躍するサイラス・サットンが立ち上げたサンケア・ブランドのマンダ。美容効果が期待されるタナカの木やミツロウ、ヤシ油、カカオ脂など、すべて天然およびオーガニック成分のみを使用した日焼け止めが彼らの自慢だ。有害な化学物質や合成物を含んでいないため、キッズや肌の弱い人にも安全で、サンゴ礁の保護にもなる。そして、パッケージにも海への配慮を徹底しており、ペーストタイプにはバンブーのケース、クリームタイプにはリサイクル可能なサトウキビ由来のバイオ・プラスティックチューブを使用している。製法から包装にいたるまでエコを徹底し、環境とサーファーの健康を支えている。
環境に配慮したブランドの取り扱いやコラボレーションを行なってきた、ロンハーマンとRHC ロンハーマン。今まで以上に、サスティナビリティ・シフトを加速させるため、2021年5月にサスティナビリティ・ヴィジョンを発表した。具体的な取り組みとしては、オリジナル商品で使用する主要素材の100%サスティナブル化や、CO2の排出量を2030年までに実質ゼロにするなどの目標を定める「環境」、サプライチェーンの透明化や慈善活動に注力する「コミュニティ」、ショップを訪れる人たちに環境と社会に優しい選択肢を提案する「カスタマー」、研修・キャリア開発へ投資し持続可能な労働環境を築いていく「チームメンバー」の4つを軸にしている。ほかにも、エコロジカルなブランドとのイベントの共催や、ふらっとお店に立ち寄って給水できるウォーター・スタンドの設置など、ロンハーマンとRHC ロンハーマンならではの視点で地球の未来について考えるきっかけづくりを行なっていく。新たなフェーズに移行した彼らから目が離せない。
世界で唯一廃棄物を出さないサーフワックス工場で製造されている、スティッキー・バンプス。毎日、18.000個のワックスがつくられ、生産時に出る不完全なものは再融解され特別な方法で再生成される。「サーフィンのパフォーマンス基準が変わる度に、多くのトラクションが求められる」。この創業者ジョン・ダールの言葉の通り、サーフワックスの代名詞的存在『オリジナル』をはじめ、抜群のグリップ力を誇る『パント』、カラーワックスの『デイ・グロー』、ソフトボードやSUP専用のものなど、多種多様なスタイルに対応できるよう、さまざまなシリーズを展開している。エコと高い機能性を兼ね備える、これが世界中のサーファーに愛される理由だ。
アメリカ全土で廃棄されるビルボード(広告看板)は年間でニューヨークのエンパイア・ステート・ビルの2倍の高さになると言われ、十分な耐久性があるにもかかわらず4~8週間で撤去されてしまう。この高いポテンシャルを持つ素材をリユースするため、立ち上がったのがバッグブランドのレアフォームだ。カリフォルニアにある自社倉庫には役目を終えたビルボードが集められ、毎月20トン以上のビルボードがサーフボードケースやバッグに生まれ変わっている。表情の異なるビルボードを切り出し製作されるので同じデザインは2つとしてなく、素材の元となるビニールは軽量かつ高い防水性能を持ち合わせているのでトリップにも最適だ。
ボディソープや洗顔はもちろんウエットスーツの手入れや食器洗いなど、さまざま用途で活用できるマジックソープを手がける、ドクター・ブロナー。製造するアイテムはすべて天然由来成分のみを使用している。生分解性に優れているので海や山といったアウトドアのシーンでも自然を傷つける心配もない。そして、農薬や化学肥料を使わない持続可能な農業を支援したいという想いからフェアトレードを徹底したり、開発・製造において一切の動物実験も禁止している。今後も、創設者エマニュエル・ブロナー氏が提唱した、「世界平和と宗教や民族の差別のない結束を唱える“オールワンビジョン”」に基づき、使う人・つくる人・地球、すべてにやさしい製品づくりを行なっていく。
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