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冷え込む朝が訪れるようになってきたオーストラリアはバイロンベイ。しかしながら冷たい風が吹く日はオフショアのサイン。
冬といっても気温は日中20度前後。晴れれば汗ばむ陽気にもなるし、まだまだ冬本番ではないかもしれない。
観光客もめっきり姿を消したこの町は静かで、サーフィンと写真を撮影するにはとても好きな季節がやってきた。
ひんやりと冷たいオフショア、南スウェル、時折降る雨。
期待と憂鬱が入り混じる条件のこの町で写真を撮る中で、自然とフィルムへの熱が増してきた。
正直なところD4とかD800Eと言った最新機種が喉からでが出そうなほど欲しいのだけど、予算の都合上今はまだ我慢の時。
そんな時は決まってサーフフォトグラファーを目指し始めた時、ある大御所のレジェンドフォトグから頂いた言葉を思い出す。
「写真はカメラじゃないよ。大切なのはレンズ。ボディーはなんだって良いんだよ」
この言葉に何度救われただろうか。
大切なのはレンズ。
そう信じてこれまで多額のマネー投資してきた。
めまぐるしく移り変わるようになった家電や携帯電話と同じように、カメラの機種もまた手に入れては時代に過ぎ去られて行く。
どんなに新しい機種を追いかけて行っても、結局のところ手元に残り続けるのは自分がこれだと信じて手に入れたレンズたちだ。
それならばと、逆の発想で時代の流れに逆らう形で世このレンズたちを生かす時方法を考えてみた。
修行時代に師匠から「フィルムで撮れるようになれ」とばかりに渡されたのがNikonのF4だった。
今でもこのカメラが心の深い場所にあって、今回のひらめきを経て再び手にしてみようと思ったのもこのカメラだ。
F4は銀塩カメラの中で今では比較的安価に手に入れることができるが、秘めているポテンシャルはさすがの一言。
一度フィルムを装填し、シャッターを切ってみると感動をもたらし、仕上がりを待つ緊張感や楽しみもまた、僕の熱を上げてくれている。
そう言えばこのカメラを受け渡された時、宿題を渡されたが、12~3年を経った今もまだ未提出のまま。
お題は「情熱」だった。
このタイトルから想像するもの、自分なりに考えこれまで作品を撮り続けてきた。
写真への情熱、サーフィンに対する情熱、被写体が熱を帯び熱を帯びている瞬間など、どんなものでも情熱に変わりはない。
お題が指すものは限りなく広くありながら、深くて、その深さに写真を撮っては満足できずお蔵に入ってしまっていた。
時を経て、カメラの機種は変わり様々なシチュエーションで、うん百万という数の写真を撮影してきた。
その時、常にこの「お題」と共に撮影してきた事は今初めて打ち明けようと思う。
でも、まだ師匠には未提出のまま。
どれだけ宿題が苦手なんだろう。。
でも、今になってようやく、彼がなぜ僕にこのお題を与えてくれたのかって事がわかるようになった。
師匠がくれたお題、それは撮影をする上で常に付きまとうほど大切なものだという事。
おかげで今僕が撮るすべての写真は「情熱」そのものになった。
言葉というのは面白い。
今の僕は、というか、、僕が撮る写真はまぎれもなく2人のレジェンドから頂いた言葉をお元に形成されているのだから。
こうして再びアナログに舞い戻った今、頂いた言葉のありがたみ、そして写真1枚に対する強い思いがこみ上げてきた。
撮影~現像といったプロセスは時間もかかり撮影出来る枚数も限られてしまう。
でも不便だからこそ、自分と向き合う時間を持てたのかもしれない。
師匠に渡す宿題はやはり、このカメラで撮ったものを提出しようと思う。
photo&text by Kuniyuki Takanami www.kunitakanami.com
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