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オッシュマンズ新宿店
20周年特別企画
FISHES
Shaped by Ryan Burch
徹底検証#1でライアン・バーチというサーファーの魅力についておさらいしたが、では、シェイパーとしての彼はどうなのか? と聞かれると、やはり天才、もしくはオンリーワンという形容詞がしっくりくる。
これまで相当な数のサーフボードを撮影してきたBlue.だが、ライアンのシェイプから受けるフィーリングは「自由」のひと言。そのオリジナリティは同世代では類を見ないし、実際、これまで彼はたくさんの実験的なサーフボードをシェイプし、圧巻のライディングを自ら披露し続けてきた。
きっと自分にしかない感性と、類稀なサーフィン・スキルから導き出される発想が、そのままオンリーワンのボードデザインとなるのだろう。その印象はフィッシュにも当てはまる。正直そのアウトラインは、まるで生き物みたいだな、と思ったほどだ。
ライアン・バーチが導く
オンリーワンのフィッシュ
これからオッシュマンズに入荷したフィッシュを検証していくが、先に知っておきたいのは、ライアン・バーチがシェイプするフィッシュは、多くのフリークたちに「ハイパフォーマンスなフィッシュ」と称えられていること。そんなライアンに触発されたシェイパーもいれば、もともと自分なりにフィッシュの前進を目指してきたシェイパーもいたりで、近年あらためてフィッシュを巡るストーリーが活気づいている。
1960年代後半のフィッシュの誕生を第1章、私たちが体験してきた2000年初頭からのフィッシュの復活を第2章とするならば、いまフィッシュは第3章へ移っていったのかもしれない。ライアン・バーチのフィッシュは、その代表格だ。
大切なのはライアン・バーチしかり、そのシーンを活気づかせているシェイパーたちは皆、フィッシュの歴史をちゃんと理解し、その魅力を自分なりに守りながら前進を目指していること。ただパフォーマンスが上がればいいというわけじゃないことは、ここに記しておきたい。
– DESIGN –
これがライアン・バーチのフィッシュ。わかるだろうか? 一見スタンダードなサンディエゴ・フィッシュに見えるが、センターからテールに掛けて、ほんのりと2回に分けてワイズを絞り込んでいる(くびれている、に近い)。
ウイングという名称が正しいかは別として、機能的には「最大幅と曲線をキープできる」「テール幅を絞れる」という、ウイングと同じ効果が期待できる。一般的なウイングのようにエッジを与えなかったのは確実に意図的で、これはライアン・バーチ自身のサーフィン体験から導き出された回答なのだろう。また、フィッシュ本来のアウトラインを維持したかった、そんな気持ちもあるかもしれない。
最初に見たときに感じた“生き物みたい”の正体は、おそらくこのなんとも言えない有機的なラインから受けた印象にちがいない。
あらためて見ると、テールは一般的なサンディエゴ・フィッシュよりもややコンパクトにまとまっている。このテール幅とグラマーな曲線が、もたつきがちなトップターンの返しやカットバック、バックサイドの操作性の改善にひと役買っているのだろう。
– RAIL&DECK –
この角度もライアン・バーチの個性が際立つ。デッキ・コンケーブ(と言っていいだろう)から思いきったダウンレールへ。かなりのメリハリだ。仮にマイルドにつないでいったら、このセンター厚はキープしずらい。高浮力と回転性を両立するうえで、じつに理にかなった意匠だと思う。
サイズや浮力感は人それぞれというのを前提として、実際のボードサイズ以上に浮力を感じるデザインなので、その分だけやや短いレングスを選べば、ライアンが理想とするパフォーマンスに近づけるのかもしれない。また、後述するが一般的なフィッシュよりロッカーがあるので、いつも通りのレングスで、やや大きめの波でカービングを楽しむのもよさそうだ。
– ROCKER –
このフィッシュを実際に持った時に抱いた印象は「軽めの仕上がり」と「やっぱりロッカーあるね」だった。
そもそも、ライアンのようなサーフボードを自在に動かせる一流のサーファー・シェイパーが、レールとロッカーのバランスにシビアじゃないわけがない。タイトなカービングやリップアクションを望んだら、回転性に直結するロッカーの調整は大きなポイントになるのだから。
つまりこのロッカーは、フィッシュの醍醐味であるスピード&グライド感をできる限りキープしながらも、キレのいいアクションを導くための、ライアンなりの理想のバランスなのだろう。
なお、クラシックなフィッシュのロッカーはもうすこしフラットに近い。一般的には、ロッカーはフラットに近くなるほどスピードやドライブ重視、ロッカーが強いほど旋回性重視となる。ただし、サーフボードの性能はロッカーだけじゃなく、多岐に渡る曲線・曲面のトータル・バランスであることもお忘れなく。
– BOTTOM –
回転性を重視するならボトム・コンケーブはダブル、もしくはVEEかな? と思っていたら大間違いで、ノーズロッカーの終わりあたりからテールエンドまで、ズドンと思い切りよくシングル・コンケーブを貫いていた。
一般的に水抜けのいいシングル・コンケーブはスピードや直進性に直結し、ダブルやVEEは操作性に有効なデザイン。つまりライアン・バーチはいたずらに旋回力ばかりを求めるのではなく、フィッシュ伝統のスピード性能を発揮したうえで、パフォーマンスにつなげていくのが理想なのだろう。
そもそもサーフィンはスピードが命。サンディエゴ・シェイプの伝統でもある。そのスピードがもたらす遠心力こそが、あらゆるアクション、大きなターン、深いトラックの源となるのだ。
– FIN –
フィンはフィッシュの性能を大きく左右する。純粋に回転性を高めたいなら、ベースが狭く、面積の小さなフィンを選べばいい。しかしライアンはそうしていない。キールフィンと呼べるデザインをしっかり踏襲し、フィッシュの伝統を継承している。ベースは広めで、ややテール側に寝かせたシルエット、そして片面フォイルだ。ややハの字のセット角で、派手ではないが操作性とグライド感の双方を意識していることもわかる。
ちなみに、クラシックなフィッシュは両面フォイルのキールフィンを真っ直ぐにセットするスピード重視の仕様だ。
~ まとめ ~
ディテール紹介はここまで。まとめると、ライアン・バーチのフィッシュは「先人たちが守ってきた伝統をリスペクトしながら、さまざまなディテールのトータル・バランスでパフォーマンスの向上を目指している」というのがBlue.なりの見解。そして、あの繊細なアウトラインはマネしたくてもマネできない、文字通りオンリーワンの存在といっていいだろう。
そして、皆さん気になるだろう「テイクオフの早さ」についてだが、フロント側に置いたワイデスト・ポイント、ボリュームの配置、シングル・コンケーブが生み出す揚力など、テイクオフの助けとなるディテールはしっかり詰まっているのでご安心を。
ただし、そこそこロッカーがあるので、自分の重心をセットする位置(もっとも早く滑り出せるポジション)をちゃんと把握する必要がある。テイクオフ後のスタンスも同様だ。これは彼のフィッシュを乗りこなすための、重要なポイントになるはずだ。
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おすすめしたい人
◎軽めの仕上げで動かせるフィッシュが欲しい! というショートボーダー
◎スタンダードなフィッシュは乗り込んだので、その進化系を体感したい人
◎やや大きめの波でもフィッシュを楽しみたいフリーク
◎フィッシュってそんなに動くの? と仲間を驚かせたい人
◎ライアン・バーチが大好きな人
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まぁ、ボードとしては確実に自慢できるでしょう(笑)。
なお、7本じっくり観察して思ったことがある。ライアン・バーチは一本一本、ボードに合わせてかなりディテールを整えている。サイズはほぼ同じでも、ディテールのバランスが絶妙に異なるのだ。
まったく同じものはふたつとなく、ハンドシェイプの魅力たっぷり。まるで、それぞれのボードに命を吹き込むように。そのときそのときのフィーリングをとても大切にしているのだろう。あらためて、彼は天才型のシェイパーであり、アーティストだ。マジックボードというのは、きっとこういう男の手から生まれるんだろうな。
なので皆さん、購入するときは実際に目で見て、触って、自分がしっくりきたものを選んでください。ボードはすべてオッシュマンズ新宿店にあります(売れてなければ)。
事前情報として、7本のボードサイズはこちら。最後に動画のリンクも貼っておくのでぜひ。ライアン・バーチのサーフィンを見たら、乗ってみたくて仕方なくなっちゃうかも?
INDIGO×WHITE
5’6″×20 3/4″×2 1/2″
BLUE GRAY×WHITE
5’5″×20″ 1/2×2 3/8″
BURGUNDY×WHITE
5’8″×20 1/2″×2 1/2″
LIGHT BLUE FADE
5’6″×20 3/4″×2 1/2″
YELLOW FADE
5’7″×20 7/8″×2 7/16″
YELLOW ABSTRACT
5’7″×20 7/8″×2 7/16″
BLACK ABSTRACT
5’6″×20 3/4″×2 1/2″
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(サーフボードの取り扱い)
オッシュマンズ新宿店
tel:03-3353-0584
http://www.oshmans.co.jp/
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photo◎Junji Kumano
text◎Blue. Magazine
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