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戦地「ガザ」の若きサーファーたちの姿を映したドキュメンタリームービー「ガザ・サーフ・クラブ」公開

戦地「ガザ」の若きサーファーたちの姿を映したドキュメンタリームービー「ガザ・サーフ・クラブ」公開

2023年10月に起こったハマスとイスラエルの軍事衝突より、「ガザ」に住む約2万人以上(2023年12月時点)の尊い命が失われた。2007年、イスラエル政府が人や物資の出入りを厳しく管理し、封鎖状態にあることから“天井のない監獄”と表現されるガザだが、西側は海岸線が広がり、地中海からスウェルが届く。

自由と尊厳を奪われた過酷な状況下で、サーフィンに興じるガザの若者たちの姿を映したドキュメンタリームービー「ガザ・サーフ・クラブ」が2024年1月13日よりシアター・イメージフォーラム(東京)、第七藝術劇場(大阪)など全国の劇場で上映が決定した。2023年12月24日、劇場公開に先駆けて特別先行上映会が開催され、本イベントに参加したBlue.でおなじみのドキュメンタリー作家、清野正孝さんの声とともに本作を紹介しよう。

SNSで「ガザ・サーフ・クラブ」の存在を知ったとき、刻一刻と深刻化を増している今見るべき作品だと思った。「そもそもガザにサーファーがいるの?」。このタイトルを見聞きしたとき、そんな印象を抱いたサーファーも少なくないはずだ。

ガザはパレスチナ自治区(独立国家ではない)の一部で、種子島ほどの面積に約200万人以上の人々が暮らしている。隣国イスラエルとの紛争が絶えず、2007年に同国が分離壁を建設。その結果、ガザは四方を高い壁と海に囲まれて物流も移動も制限された、”天井のない監獄“となった。以後も紛争は絶えず、多くの建物は破壊され、人命も奪われつづけている。ニュースは悲惨な状況しか映さないけど、本作ではガザのリアルな日常が映し出されている。

作中で主人公の青年イブラヒームは、「戦争が続くことにガザの人々は慣れてしまった」と語る。“慣れ”という言葉の裏には諦めの気持ちが含まれているように思う。そして最年長サーファーのアブー・シャイヤブ(現在行方不明になっている)は、ガザの外の世界を夢見ているが、決して叶わないと悟っている。将来の行く末がまったく見えないのがガザの現状だ。

そんな困難な状況下でもサーフィンに興じる若者たちがいる。オンショアのジャンクなコンディションだろうがお構いなしにパドルアウト。どんな波からも喜びを見出す。車にボードを積んで海に向かいながら駄話しをする彼らの姿を見て青春感を感じた。

そしてガザには男性だけでなく、女性サーファーもいる。15歳のサバーフは、子どものころからサーフィンを習っているローカルヒーロー。彼女に憧れてサーフィンを始める女の子もたくさんいて、サバーフはそれを誇りに思っている。しかし大人になるにつれて、女性が海で泳ぐことを疎まれる。海から遠ざかっているサバーフが、サーフィンを楽しむ幼少期の自分を映したビデオで嬉しそうに見つめるシーンは印象的だった。海は人種や宗教、性別の壁もなく争いもない。彼らにとってサーフィンは希望だ。

物流の自由がないガザにサーフボードを持ち込んだのは、米国人の医師のドリアン・パスコウィッツ氏。スタンフォード大学で医学を学んだ異色のサーファーだ。2007年、イスラエルの監視下のなか、撃てるものなら撃ってみろと信念を貫き、サーフボードを届けた。当時ガザにはふたりのサーファーしかいなかったが、彼がサーフボードを届けたことでサーファーが増え、それに伴い「ガザ・サーフ・クラブ」などのサーフコミュニティーが生まれている。

ガザのサーファーたちはそうして持ち込まれたサーフボードをいまでも大切に使っている。材料が手に入らないため、ガザでサーフボードを作ることはできない。漁師のサーファーは「子どもよりサーフボードの方が大事だ。子どもは産めるけど、サーフボードは手に入らない」と笑えない冗談を言うのだけど、それほどサーフボードは貴重なものなのだ。

サーフィンをしているときの笑顔や、生活の営み、叶わない恋があることを知ったいま、彼らを他人とは思えない。“彼らを知ること”、この映画の価値はそこにある。特別試写会に登壇された元パレスチナ事務所長の成瀬猛さんは、「この戦争もいつか必ず終わる日が来る」と語る。それがどんな形かは分からないけど、平和が訪れ、彼らがまた海に戻る未来が来ること願っている。サーフィンには人と人の間にある緊張を緩和する”効能”がある。波に乗っている間に感じるのは圧倒的な自由なのだから。その感覚を知っているサーファーたちに、ガザ・サーフ・クラブを是非見ていただきたい。


ガザ・サーフ・クラブ

監督・脚本:フィリップ・グナート、ミッキー・ヤミネ
製作総指揮:ミッキー・ヤミネ
プロデューサー:ベニー・タイゼン、ステファニー・ヤミネ、アンドレアス・シャープ
撮影:ニクラス・リード・ミドルトン
編集:マレーネ・アスマン、ヘルマール・ユングマン
⾳楽:サリー・ハニー
出演:サバーフ・アブ・ガネム、モハメド・アブー・ジャヤブ、イブラヒーム・アラファト
原語:アラビア語 / 英語 / ハワイ語 字幕:⽇本語
配給:ユナイテッドピープル
字幕:額賀 深雪
字幕監修:岡真理
2016 年/ドイツ/87 分

2024年1月13日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

オフィシャルホームページはこちらから


■問い合わせ
ユナイテッドピープル(https://unitedpeople.jp
☎090-8833-6669
pr@unitedpeople.jp

text◎Masataka Kiyono(@masatakakiyono

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