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I’M HARPER 〜自己満足に、生きる。〜
Presented by I.W.HARPER
「哲学のないところにオリジナリティーはない」
自分の信じたものに、繰り返し情熱を注ぐ。その姿は輝きを放ち、決して自分のスタイルを失わない。そんな人物を紹介する「I’M HARPER」。革新的なシューズデザインをはじめ、日本を代表するファッションデザイナーとして活躍する三原康裕さんに話を聞いた。
***
——シューズデザインを始めたきっかけを教えてください。
僕が高校生くらいの頃、ゴッホの「ひまわり」が58億円で落札されたんです。オークションで。当時は大きなニュースになりましたけど、僕には、アートが拝金主義の産物になった気がしてならなかった。それをひっくり返してやろうという思いもあって、独学で靴づくりを始めました。
——バブル時代への反骨精神がバックグラウンドにあったのですね。では、なぜ靴だったのでしょうか。
「多くの人にとって、芸術を身近なものにしたい」という願いがあったからです。美術館で絵をペタペタ触ったりしたら怒られるでしょう? でもアートって本来、もっと自由に味わうものだと思うんです。その点、靴は日常的に履くものですから。極端なことをいうと帽子や手袋でもよかったのですが、とにかく五感に訴えるような作品をつくりたかったんです。
——駆け出しの頃に、何か意識していたことはありますか?
大事にしていたのは、独学にこだわったところ。というよりインターネットが未発達だったから手探りでやるしかなくて。一人で工場を訪ねて、職人さんの手先を真似してみたり、いろいろ試しました。一番大切なことは、実際に経験しないと身につかないんです。
——なるほど。では靴づくりをする前はどんな生活をしていましたか?
上京する前なので、地元福岡でサーフィンしていましたね。始めたのは小学5年生の頃。2つ上の兄が近所のサーフショップに出入りするようになって、そこについて行ったのがきっかけです。
——ショートボードで大会にも出られていたとお聞きしました。
そうですね。でも正直なところ、20歳で上京したあとは、やめていた時期が10年近くあったんですよ。
——それは意外です。なぜでしょうか?
サーフィンしながら大学には通えない、という自覚があったからです。ライフワークである芸術から目を背けたくなかった。
——それでも30歳を目前にして復帰されたのは、サーフィンの魅力が勝ったからでしょうか。
靴で手に職をつけた、という自信ができたからです。直営店である「SOSU MIHARAYASUHIRO」の2号店を福岡にオープンさせたり、PUMAとのコラボレーションスニーカーを全世界で発売したり、あの頃は仕事が軌道に乗りはじめたときで。一人でお金を稼げるようになったら、自然と海に入るようになりました。
——好きなことをとことん追求されていたのですね。三原さんは現在、パリやロンドンでコレクションを発表されていますが、トップデザイナーになるための条件とは何でしょうか。
同じ土俵に乗らないことかな。僕の場合、インスピレーションは「ファッション」の外からくるんですよ。僕は服の勉強をしてきませんでしたが、それ以外の経験がクリエーションを支えています。むしろ、それが新しさを生むのだと考えていて。作品に宿るオリジナル性は、クリエイターの哲学から生まれる。その哲学は過去の経験から生まれるんです。
——サーフィンも今の活動に結びついていますか?
少なからず。海のコンディションが日ごと違うように、創作活動や会社経営にも波があるわけです。セットが入るときはいいけれど、フラットなときは全く波に乗れなくなる。最悪な状況で求められるのは、じっと耐えられる力があるかどうか。サーフィンからはそれを学んできました。ゆっくりでもいいから、息を殺して待つんです。一気に盛り上がるけれど、一気に廃れる。そんな一過性の流行にはなりたくない。
——強い想いが伝わってきます。では、サーフィンの魅力についても教えてください。
すべてといってもいいんじゃないかな。大波に向かってパドルアウトするとき、ファンウェーブに乗るとき、アドレナリン、波の音、太陽の光。すべてが魅力です。
——同感です。ちなみに今回のインタビューは「自己満足に、生きる」をテーマにしています。このメッセージを聞いて感じることは何ですか。
自己満足。いいですね。ただ僕は自分のためというより、他人のために何かをしていきたい。昨年、東京都・日本橋に「日本橋アナーキー文化センター」を開いたのはアーティストのためです。家賃も人件費も負担して、作品の売上はすべてアーティストに還元しています。そういうのもやりたいからやっているだけで、自己満足なんですけど、カルチャーの発展には必要な自己満足だと思っています。
——I.W.HARPERは、「現代的な洗練」をコンセプトにしています。三原様にとって、自分を洗練させるために必要なものはなんでしょうか?
集中力をもつこと。現代は気の散るコンテンツであふれているから、余計にね。作品づくりには不可欠です。
——シューズデザインとウィスキー。2つは異なるようで、“ものづくり”という点では共通する部分があると思います。ところで三原さんは、普段からお酒は飲みますか。
飲みますよ。特にハーパーは昔から飲んでます。バーでよくカッコつけてましたね。ロックで頼んで、大きくて丸い氷をコロコロさせたりして。そういう時期って誰にでもあると思います。
——ハーパージュレップは、砂糖・ソーダ・ミントで作ったI.W.HARPERオリジナルカクテルです。飲んだ感想をお聞かせください。
ハーパーのまろやかな甘さと、すっきりとしたミントの香りが印象的です。海上がりの一杯にピッタリですね。
——最後に、ハーパーではアルコール飲料のただしい飲み方を啓発する「DRINKiQ」という取り組みを行っています。それについてどう感じますか。
お酒はアートや音楽、サーフィンといったコンテンツとセットになっているものですよね。つまり「お酒を飲む」ということは「文化を拓いていく」行為でもあるわけです。その点で「DRINKiQ」は、お酒を飲む人やカルチャーへの思いやりが感じられます。ファッションにも言えることですが、そういうプロジェクトは今後、お金に代えられない財産になっていくはずです。
photo◎Ryo Shimizu
text◎Ryoma Sato
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