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ライアンとアレックスはつねに同じショップのなかで顔を合わせて仕事をしている。実はRHC ロンハーマンのためにライアンが削った12本のフィッシュのシリーズも、「いままで見たこともないようなラミネートにしてほしい」というやや無茶振りな注文に応えるべく、ふたりが協力してコラボしたものだった。実際にはライアンのアイデアをアレックスが高度な技術を駆使して仕上げたかたちだ。それはデッキをオペークで巻いたあとにデッキ面の一部を剥がし、再び顕になったフォームの部分にアレックスの代名詞でもあるフリーハンドのカラーグラデーションを入れていくというもの。すべてのボードを仕上げるのに6日間を要したというから大作である。
「ラミネートはやり直しがきかない。失敗したらボードを台無しにする。だから何か新しいクールなものに挑戦することはとてもリスクをともなうんだ。それは、いままでに誰も食べたことがない味の料理を作るようなもの。うまくいくかすらわからない。練習を繰り返すしかない。ライアンの12本のボードも最初の1本は作業が複雑で時間がかかり正直不安だったけど、本数をこなすうちにどんどん良くなっていった。最終的にはうまくいったから良かったけどね」
店内でもひときわ目を引いたそれらのボードは確かに誰も見たことのないカラーワークだった。ただそこにはアレックスならではのテクニックとスタイルがしっかりと見てとれた。
当初はパーティーの時間内にライアンたち4人がシェイプした2本のボードをアレックスがラミネートする予定だったが、実際には時間がかなり押した。シェイピングベイのダストが取り除かれたあと、アレックスはすぐにラミネートの準備に取りかかる。グラッサーはシェイパーと違い、ゆっくり時間をかけて作業することは許されない。つねに時間との戦いだ。それでもボードをアートピースのように仕上げるためにはクリエイティブでい続けるしかないのだ。
削りたてのフィッシュとログは、シェイパーたちがオーバーした時間を取り戻すかのように、手際よく素早く巻かれていった。
「正直ふだん使っているマテリアルや道具ではなかったのと室温もかなり高かったので、自分のラミネートルームでやるようにはいかなかったけど…」
フィッシュはグリーンとブラウンが混ざりあうマーブルに、ログは淡いグレーとベージュのアブストラクトに。まったく対照的なそれらの仕上がりは、それぞれに美しいものだった。慣れない環境でのラミネートではあったが、作業を終えて出てきたアレックスを待ち受けていたのは彼の神業を固唾を飲んで見守っていた人々の惜しみない拍手だった。
「自分としてはどうかなと思う仕上がりでも、いつだってカスタマーが大喜びする顔を目の当たりにすると不安が一気に吹っ飛ぶんだ」
それはグラッサー冥利につきる瞬間。おそらくアレックスはラミネートを終えたあとの、あのRHC ロンハーマンみなとみらい店での夜の歓喜を忘れることはないだろう。
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photo&text◎Takashi Tomita
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