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#001 – サーフなお家の実例集

#001 – サーフなお家の実例集
(その前に立つだけで屋内空間への期待に胸が高鳴る玄関部分。扉の左右と上部にはまった大きな窓と屋根に設えた天窓から注ぐ光が土間を照らす。白壁と無垢の木材とのコントラストが美しいファサードがこの家の個性)
 
 
 
 
サーファーの数だけスタイルがあるように、望む暮らしのカタチもさまざま。
温かさ、洒脱さ、心地良さ……その空間に立ったときに感じる空気は、
そこに住む人々自身を映し出す鏡のようだ。
非常に多くの条件が伴う住まいづくり。
個性や理想をどう詰め込んで、このライフスタイルアイテムをビルドしていこうか?
自分らしさをあきらめなかったサーファーたちの、理想の家ベストサンプル。
 
 
 ***
 
 
 
 

#001

余白を残した家
千葉・館山

 

 

 

「家族の成長とともに、その時々の暮らしかたに合った住環境をDIYできる、余白のある家にしたかったんです」

 

そう語る、本間さんご夫妻がこの家に住み始めて2年半(2019年7月時点)。
そのときまだ奥様のおなかのなかにいなかった息子の成くんが、いまもう1歳半だということを考えると、これまでの時間のなかだけでさえ、さまざまな住む環境の変化があったであろう。そして、その積み重ねでいまがある。

 

普通であれば、一生で一度の住まいづくり。前途は多難だった。

 

「家を建てようと決めたあと、いろんなハウスメーカーの展示場に足繁く通って可能性を検討しました。行く先々で、できるところはDIYしたい、という希望を出してはみるものの、大体のところであまり良い返事をもらえなくて。それを好まないメーカーさんも多いというのがわかりました」

 

加えて、ふたりの予算を相手に伝えると、だいたいは最初から首を横に振られるばかりだった。

 

「その金額だと中古物件を購入してのリノベーションが望ましいのでは?」

 

そんな提案ばかりだったそうだ。
最終的に、彼らの希望を親身になって引き受けてくれたのは、意外にも近所に住む彼らの知人であった。

 

(広い土間はこの家のコミュニケーションスペース。ついつい長居してしまいそうな快適空間。訪れた人との会話も弾む)
(家屋の東西を一貫する空間が大きな開放感を醸成する。手前が東側で寝室、奥が西側でLDK。土間部分との接続部にそれぞれ引き戸があって、欲しいシチュエーションによって空間を仕切れるつくり)

 

ふたりが以前暮らしていたのは、いまの家から道を挟んですぐ反対側の集合住宅。それはいわゆるアパートやマンションにみられる様式ではなく、部屋の広さや間取りなど空間のつくりが1ポーションごとにすべて異なる、2階建てで長屋スタイルのデザイン性にあふれる集合住宅だ。

実際ここでの暮らしを気に入っていた旦那さんの亮さんは、この非凡な建築を手がけた地元設計士に新居の相談を持ちかけた。

 

「夫婦で共通していたのは、片流れ屋根の平屋で、あまり大き過ぎないもの」

 

当初ふたりはそれぞれ一冊ずつノートを用意し、ディテールも含めた理想の家のカタチを思うがままにしたためた。それを設計士が受け取り、計画を揉んでいった。

 

「ご夫婦のあいだで、求めている事柄のなかに共通項が意外と多く、それほど意見が割れることがなかったと記憶しています。僕も自分が設計したロングハウスの一室を事務所として使っていることもあり、彼らの暮らしぶりを見てきていたので、イメージはありました。
設計って、家が建つ前のたった1年とかのあいだに考えるもの。それと比べると、そのあとの人生は長い。だから、なんらかの余地を残したラフな空間がいいのかなと思ったんです」

 

設計を担当した忍足さんは、こう語る。そうして完成した住宅模型、それは結果、ふたりのイメージ通り……いや、それ以上の空間構成だった。

 

(ロフトから見たダイニングキッチン。剥き出しの梁が木造在来工法の美しさを視覚的に引き立てる。計算し尽くされたデザインのなかにある程よいヌケ感がこの建築の凄み)
(インテリアは古道具屋でたまたま出会ったモノなど、流行りに左右されないタイムレスなものを大事にするふたり)

 

家を建てた土地は、南側に民家を背負っているため、北側がメインのファサード。背の高い玄関扉がゲストを迎えてくれる。
屋内に一歩足を踏み入れれば、吹き抜けの大きな土間が広がり、スタイリッシュな薪ストーブが堂々鎮座する。向かって右手にはサーフボードやボディボードとウエットスーツ、バスやソルトゲーム用のロッド、アウトドアグッズなど趣味のアイテムが美しく収納されており、その奥にバスルーム。左手にはセラピストである亮さんがプライベートでお客さまを施術するための小部屋がある。

 

「遊び道具ががインテリアとしても映えるような収納を希望しました。加えて、冬場に海から帰ってきたらウエットのままお風呂に入れるよう、バスルームは土間から直結しているこの位置です」

 

(玄関をくぐり、土間から直接入れるバスルームが奥に。冬場のアフターサーフに超便利。その横は趣味の道具を“見せる収納”)
(玄関をまたいですぐの小上がりの奥には旦那さまの施術室。いずれは外にDIYで施術小屋を建てたいと意気込んでいた)

 

さらに足を踏み入れると、ちょうど土間と垂直に十字を描くように、東から西に向かってひと筋の空間が家のなかを貫いている。その両サイドには大きな窓やサッシがはまっているので、家の大きさ以上に空間的な開放を感じさせてくれる。
そして向かって左手、東側には寝室とクローゼット、右手の西側にはLDKという構成だ。

 

「子供がどこにいてもだいたい目が届くので安心です。東西両方の空間が引き戸で仕切れるので、ホームパティ、施術、ゲストを泊めたりと、土間を中心にしていろんな使い方ができるのも気に入っています。
あと、薪ストーブは導入して本当に良かった。もはや冬場のマストアイテムですね」

 

(ロフトの西側奥のスペース。屋根裏部屋のような設えのさらに奥には小さなカバードポーチ。プシュって音がいまにも聞こてきそう(笑))
(リビングからダイニング方向をのぞく。テレビボードとダイニングテーブルはアンティークのものを購入して傷んでいたところに手を加えてもらった。ご夫婦の落ち着いたセンスの良さがあらわれている)
(ストーブの裏側のスペースには洗面台とトイレ。タイル部分などもご夫婦で協力してDIY)

 

天井は梁を活かした吹き抜けでロフトがある。そしてロフト西側の先端が小さなカバードポーチになっていって、亮さんだけの秘密のビアガーデンだ。
外観を見てみると、家屋を正面から捉えたとき、サイドに伸びる軒部分がアシンメトリーになっており、リビングから外につながる西側の軒先がかなり長く伸びている。いずれはここにデッキをつくり、縁側ような空間に設えるイメージだ。

 

「理想の家づくりの秘訣。それは、最初の段階では予算のことは置いておいて、叶えたいことをすべて相手にお伝えするのが良いと思います。また、途中で感じたことを書き留めておくノートを準備しておくのは良いアイデアです。で、最初はうまくいかなくても、いろいろ回り探し歩いてみると、親身に相談に乗ってくれる方に出会えたりする。自分たちの思いを諦めなければ、どういう形でか必ずイメージを実現できると思います」

 

 

***

 

DATA

種別:注文住宅
居住者構成:夫婦+こども2人
構造・規模:木造1階建
敷地:404.50㎡(122坪)
建築:83.43㎡(25.23坪)
延床:109.30㎡(33坪)

 

 

(構造材をプレカットしてもらい、設計士さんと一緒にセルフビルドしたカヌー小屋。憧れちゃうな、こういうの!)
(外観はご覧の通り。大きな片流れの屋根がどっしりとしていて「これぞ、平家の醍醐味」といったルックスだ。高いほうの軒高は5メートル近くもあって、建築としての迫力も満点!)

 

 

 

【この家を手がけた会社】

忍足知彦建築設計事務所
tao-arc.com

 

 

 

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