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階段を上がり、2階のリビングに足を踏み入れた瞬間、思わず深呼吸したくなるような空気に包まれた。
高い天井を縦断する2本の太いかざり梁からは、たくさんのグリーンたちが生き生きと葉々や蔓を伸ばしている。
視線の先には佐島の穏やかな湾。フルオープンのサッシからは燦々と海からの眩しい光が差し込んでくる。家全体が漆喰と無垢杉板のみでしつらえられた壁は、まるで家自体が呼吸しているかのようだ。
「この家に住み始めたとき、ずっと憧れていたペレットストーブを思い切って導入したのですが、差し込む陽の光でリビングが冬でも温かく、結局ほとんど使わなくて済んでしまっているんです。まるで温室のなかにいるかのような部屋なので、植物たちもとっても居心地良さそうです」
堀越さんご夫妻のにこやかな表情を見ているだけで、植物たちに対する愛情と、そこに生きる植物たちの気持ちが伝わってきそうだ。
それもそのはず。奥さまは長年グリーンの仕事に携わっており、現在は母屋1階の一角で“Indian Green”というショップを営んでいる。
ここではさまざまなグリーンとそれに似合う作家さんのポットなどアクセサリー類を取り扱い、日常に緑のある暮らしを提案している。週末には佐島の海で漁れる新鮮な海の幸を求めて多くの観光客たちが訪れるが、インスタを見たグリーン好きたちが堀越さんたちのお店の雰囲気を求めてここにやって来る。
最近では、密を避けたマンツーマンの寄せ植えワークショップなんかも人気らしい。
旦那さまは、ここ佐島の海で育った生粋のローカル。
若かりし頃は日本全国、海沿いの街を旅するように転々としていたが、5年ほど前に佐島に戻り、慣れ親しんだこの海の目の前に家を建てた。
「施工していただける会社さんを探しているとき、こんな家がいいなというイメージに近い内装の写真が入った看板をたまたま目にして、スターホームさんのオフィスにふらりと寄らせていただいたのがきっかけです。すぐ意気投合して、そのまま決めちゃいました」
これから毎日過ごす自分たちの住まい。
欲しい空間のイメージが明瞭だった旦那さまは、間取りと使用する建材や設備、そして備品など、多くのパートに自分のこだわりを反映させたことによって、至極オリジナルな空間が生まれた。
「スターホームさんはいろいろ大変だったと思いますが、僕のわがままにもしっかり耳を傾けてくれて。例えば、手すりの角度をどうするか、など非常に細かなところまでも僕らの好みに合わせてくださいました」
構造は2階+ロフトという造りで、1階は前述した店舗と玄関部、加えて奥にお義母さまの居住スペースがある。
いろいろ探してやっと出会えたという、美しい桜の木の手すりを伝って2階へ上がると、22畳のリビングとキッチン。その奥はバスルームと主寝室、息子さんの部屋という構成になっている。
リビングから続くデッキ部は広々15畳。友人たちが訪れれば、デッキにテントを張ってBBQプレイスに早変わりする。
リビングの一角にはアイランドのキッチンとパントリーを擁している。それらの天井にあしらわれたかざり梁の古材は、ここの港で実際に使われていた古い生簀の枠材で、1階ショップの天井の演出にも同様に使われている。長いあいだ潮で洗われた木材は、新材には決して生み出すことのできない雰囲気とバックストーリーを併せ持つ。
「最終的に、思い描いた通りのマイホームを完成させることができました。
昔は良く旅に出ていましたが、この家ができてからはあまり行かなくなりましたね。けれども逆に、ここが旅先になったというか、お客さんを迎えるディスティネーションになったというか。
友人たちが遊びにきても、なんだか旅行に来ているみたい、なんて言ってくれるんですよ」
よく晴れた日、海の目の前のデッキでお話しをうかがいながら、まさにそんな夢ごこちをひそかに感じていた。
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DATA
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種別:注文住宅
居住者構成:夫婦+子供1人+お母様1人
構造・規模:木造2×4 二階建て
敷地:171.65㎡(51.92坪)
建築:77.01㎡(23.29坪)
延床:139.11㎡(42.08坪)
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