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最寄りの駅を降りると、周りの家々とは一線を画すレンガ積みの四角い建物が、抜けるような青空の下たたずんでいる。
その風景は明らかに、その先に開けた風景があることをうかがわせる。
想像通り、玄関扉をくぐりリビングに足を踏み入れると、そこには一切視界を遮るもののない鎌倉の家並みと、遠くに海が広がっていた。
「空気が澄んでいる日には伊豆大島まで望めます。
近くのビーチまでは自転車で約10分。また、最寄りの駅までは徒歩1分もかからない理想的な生活立地です」
以前は海沿いのマンション住まいだったが、こどもの成長に伴って新たな場所を探していた。
「鎌倉の海沿いはご存知の通り、とても土地が高価だし、なかなか空きも出ません。
新築と中古双方を選択肢にさまざまな条件を探すなかで、タイミングよくこの物件が出てきて。自分の散歩コースにあったのでずっと気になっていた物件のひとつでもあったんです」
購入したのは、築45年の鉄筋が基礎の家。
もう当初の図面さえ見つからず、改築はすべて現場合わせの手探り状態。構造のみを残してすべてスケルトンにしたのち、まっさらな状態で一からリノベーションを行なっていった。
指名を受けたのは、家族や住まいの歴史をテーマに住空間を手がけるピーズ・サプライ・ホームズだ。
「購入時はもっと細かく空間が仕切られていたのですが、リノベする段階で抜ける壁はすべて抜きました。できる限り開放的な空間をつくりたかったんです」
丘陵地帯の斜面に建つこの家のエントリーは上階から。
玄関ホールから扉を挟んだ向こう側のLDKは前述の通りひとつの大きな空間で、仕切りがない分いつもそこに集う家族の気配が感じられる。
玄関ホールの右手には下のフロアへ続く階段がある。構造的に元の位置を活かしながら再構築していった。
家族4人とも靴に愛着があり、その数は膨大。それを受けて階段吹き抜けの両側をすべてシュークローゼットに仕立てて“見せる収納”にしたことで、この家にまたひとつ個性ある空間が加わった。
下のフロアは完全なるプライベートスペース。
クローゼットを中心に、家族ひとりひとりの小部屋、洗面や風呂などの水回り、屋外にはウッドデッキという構成だ。
かつてWSLを賑わせた名サーファーのネームプレートがあしらわれた収納ロッカーや、デッキに新たに建てられたライフガードタワー風のサーフボード・ストック小屋など、遊び心あふれるサーファーライクな演出も満載だ。
下階の中心にあるクローゼットについては、ウェアハウスで使われるような無骨で背の高いアイアンラックに家族全員の衣類が整然と平置きされている。まるでセンスの良いアメカジ店に迷い込んだかのような雰囲気。
そして、その周りには小さいけれど4人それぞれの小部屋。家族であってもプライバシーや個々の趣味趣向は大切、という考えからだ。
実際、動物が苦手な姉とペットが欲しかった妹同士、それぞれがストレスなく暮らしをシェアしている。
そして、旦那さまのプライベートスペースにいたっては、過去にサンフランシスコ湾に浮かんでいたアルカトラズ刑務所の監房をイメージして設えられた独創的な空間だ。
「いまは亡き実父が’60年代のアメリカが大好きで、すべてに非常に強いこだわりを持った人でした」
かつて自身の住まいにこんなスペースを持ってみたかったというお父さまの念願を、息子である家主がかなえたかっこうだ。
精神的にも物質的にも伝統を受け継ぎ、新たに価値を育む家。そんな住まいこそ、ピーズ・サプライ・ホームズの真骨頂だろう。
***
DATA
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種別:リノベーション
居住者構成:夫婦+こども2人
構造・規模:RC構造2階建
敷地:197.72㎡(59.7坪)
建築:70.92㎡(21.7坪)
延床:123.91㎡(37.4坪)
設計:ピーズ・サプライ・ホームズ
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