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探し続けた理想の土地は、どこよりも眺めのいい水辺の丘の一角だった。
目指したのは、愛犬も、また人間も素足のまま内と外を往来できる、
ラフさが似合う海の家のような住まい。地元に根ざした設計士は、
海辺の家の在り方を、自身の暮らしを通じて体現する。
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#027
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自分の手で理想に近づける家
神奈川・鎌倉
雰囲気があって、明らかにオリジナル。にもかかわらず、アットホームでリラックス。
湘南~鎌倉~逗子・葉山を散策すると、そんな空間に高頻度で遭遇するのだが、河村礼緒さんたち家族が暮らす住まいもまさに、そんな場所だ。
その空気感は家主たちからも感じ取れ、いつも魅力的に思うと同時に、多くの人たちがこの地に憧れを持って訪れるのも頷ける。
この日も、七里ヶ浜からの明るい朝の光が差し込む家の前で、河村さんと息子のイオンくん、愛犬のロンロンがわれわれを迎え入れてくれた。
まず正面に見えるのが、ガレージのようなユーティリティスペース。
「今は仕事ができるようにしてあるけど、将来はイオンの部屋かな。一段高いフロアに玄関を設けたくて、このスペースをつくったんです。
こんな空間があっても楽しいじゃないですか。
自分の中でのコンセプトは、ビーチハウスっていう感覚よりも、日本の海の家って感じ。裸足で外をペタペタ歩ける、そんな家が理想でした。
本当はもうちょっとラフに仕上げたかったんだけど、たまにお客さんにも見てもらうので(笑)」
ご存知の方も多いだろう。河村さんは湘南界隈を中心に、無垢材や古材など天然木を多く用いた住宅を手がける「スタジオレオン」の代表であり、設計士。
“いつかは河村さんの家に住みたい”と憧れを持つファンも非常に多い。
玄関ホールへは前述のユーティリティスペースと玄関双方からアクセスできる。
モルタルの土間はフラットで、その場で靴を脱ぎ、端に寄せてからその先へと歩みを進めるスタイル。
その境界は曖昧で、まさに素足が良く似合う。
この中2階から奥へ再び三段下りて進むと、寝室やバスルーム。階段を上がると2階のリビングへと通じている。
南側には大きな木が枝葉を広げ、東側は眼下に七里ヶ浜を臨み、その向こうには深緑の逗子の山々。
屋上へ上がると、その景観はより壮大になる。
リビングは四方全面が多数の窓に覆われ、リビングからステップ廊下でつながるダイニングキッチンもまた、裸眼では眩しいくらいだ。
「北側は森になっていてカーテンはいりません。幼少期からずっとマンション暮らしだったので、明るいリビングは憧れでした」
河村邸全館を特徴づける、スキップフロアによる空間同士の変化がおもしろい。
自分がどの階層のフロアにいたか、一瞬戸惑ってしまうほどの変化だ。
「今の世の中じゃ平坦なバリアフリーが推奨されたりするけど、それが仮に30~40代の夫婦や子どもが住む空間であるなら、おもしろくないんじゃないかな。
やっぱり最初は、特に子どもたちがちょっと遊べるくらいの空間の方がいい。
こうやってわざと柱があったり、多少危なっかしくてもね。
本物の木々に触れて何かを感じて欲しいし、大人になって『おもしろい家に住んでたよな~』って思い出してくれればいいのかなって」
住み始めて10年が経った河村邸。
その間に家族が増え、暮らし方も少しずつ変化してきた。
「家って人生の節目に合わせてリフォームし直せばいいのかなっていうくらいの感覚でいた方が、もうちょっとリラックスして向き合っていられると思うんです。
思いつきでいいので、部分部分をちょっとずつ変えるだけでも、住んでるテンションは変わる。
そういった意味で、この家も、思い描いてきた住まいに手直ししながら少しずつですが近づいていってる気がします」
河村さんが愛情を注いできた空間で束の間の時を過ごすうちに、“あくまで人が主役の家づくり”をあらためて垣間見た気がする。
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DATA
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種別:注文住宅
居住者構成:夫婦+子ども1人
構造:木造在来工法2階建て
敷地:174.77㎡(52.96坪)
建築:66.12㎡(20.03坪)
延床:114.64㎡(34.73坪)
設計:スタジオレオン
スタジオレオン
https://studioleon.co.jp
photo◎Pero text◎Isao Negishi(KUJIKA)
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